駅員さんのサポートを受けて、
僕は新大阪駅から、九州新幹線さくらに乗り込んだ。
駅員さんが、窓側の僕の指定席の説明をしようとされるのと同じたいみんぐで、
「荷物動かしましょうか?」
通路側の座席の女性の声がした。
その瞬間、僕はほっとした。
「ありがとうございます。」
僕は御礼を言いながら、座席に座った。
それを見届けて、駅員さんは降りていかれた。
「僕は目が見えないので、隣の席にいらっしゃるのが男性か女性か、
時には日本人か外国人かさえ判らないこともあるので、
声を出してくださって助かりました。」
僕は付け加えた。
「図々しい大阪のおばちゃんですから、大丈夫ですよ。」
彼女が微笑んだ。
僕達は、その流れで、いくつかの会話を交わした。
特別に意味がある内容でもない。
意味があるのは、交わすことができるということだった。
彼女が下車する福山のアナウンスが流れた後、
彼女は準備をし、
そして、僕に向かっておっしゃった。
「またいつか、どこかでご縁があったら。」
僕も、笑顔で答えた。
「ありがとうございます。」
人間同士、生の言葉っていいよなぁ。
最近よく、携帯電話の画面とコミュニケーションを取り続けている人達に出会う。
便利な道具を使っていた人間が、
どんどん道具に使われているのだ。
画面から目を離せば、
澄み切った秋の空があって、
可憐な花が咲いていて、
笑顔の人間がいるのに、
もったいないなぁ。
なんて言うと、
図々しいどころじゃなくて、
うるさいオッサンって言われるのかな。
(2013年10月14日)