宅急便屋さんが届けてくれた箱の中には、
彼女の故郷のご自慢の品が2セット入っていた。
毎年お中元やお歳暮の季節に届くけど、
僕と彼女の間には、社会的な上下関係もないし、
何かお世話をしたようなこともないのだから、
純粋にプレゼントだ。
恐縮する僕に、彼女はいつも、ファンですからと笑顔で返してくださる。
2004年に発刊された「風になってください」を読んでくださってから、
かかさず届けてくださる。
長年視覚障害の方々に関わってこられた彼女にとって、
それぞれの作品が、いろいろな場面で重なったらしい。
まさに、共感だ。
「風になってください」は、
僕や出版社の予想を超えて、
1万部のロングセラーとなっている。
僕は、奇跡だと思っている。
奇跡をおこしたのは、
この人間同士の共感の力なのだろう。
数日前も、京都府下に住んでおられる視覚障害の男性から、
「風になってください」と、
「風になってください2」の注文があった。
もう文字が読めなくなっている彼に、
どうされるのかと尋ねてみた。
「私の思いと同じことを書いてあるから、見える友人にプレゼントするのです。」
電話の向こう側から、笑顔の声が返ってきた。
目頭が熱くなった。
たくさんの仲間、そして、僕達に関係しておられるガイドヘルパーさん、
ボランティアさん、福祉関係者、教育関係者、医療関係者、
共感がエールとなった。
一番最初に、本を書こうと決めた時、
それを僕に勧めた友人は、
「活字には力がある。」
と教えてくださったが、今頃になって実感している。
そして、照れくささを乗り越えて書くのに、
とてもエネルギーが要ったのを鮮明に記憶している。
だいぶ慣れてはきたけど、
やはり、照れくささはつきまとう。
時々、ファンですと言われて、下を向いてしまう自分がいる。
そうそう、プレゼントが2セットになったのは、
両親も好物なんだという、
僕の不用意な言葉のせいだと思います。
申し訳ない気持ちも大きいのだけれど、
ファンのやさしさに甘えることを許してください。
(2013年7月12日)