昨日は大阪の大学での講義だった。
毎年行っている大学なので、
学校のだいたいの雰囲気は判っているが、
一回の特別講義なので、学生達は初めて出会うということになる。
教室に入った時、
そこには普通の大学生達の日常があった。
大人数での必修の授業なので、
高い向学心とか関心とかがあるわけでもない。
始業のベルがなっても、なかなか話し声も止まらないし、
教室の後方から動かない学生もいるようだった。
僕はいつものように、
僕達のことを、少しでも知って欲しい、
一人でも知って欲しい、
それだけの思いを抱えて、教壇に登った。
未来への種蒔きだと思っている。
当然なのだが、僕には、話を聞いてくれている学生達の顔は見えない。
目の前には、いつもと変わらない灰色一色の世界があるだけだ。
僕は話し始めた。
僕の声が、マイクを通して、教室に流れ始めた。
学生達は、僕を見つめた。
僕の一言一句に耳を傾けた。
いつしか、教室には静寂があった。
真面目そうな学生も、成績の悪い学生も、
ヤンキーの男子学生も、化粧の濃い女子学生も、
それぞれが、それぞれの思いで、
授業に参加してくれた。
教室に、人間同士の絆が生まれた。
やさしさが漂った。
授業が終わって、教室を出る学生達が、
「ありがとうございました。」
声をかけてくれた。
「こちらこそ」
僕も、感謝を返した。
同行してくれた友人が、帰りの電車の中で、
学生達のレポートを読んでくれた。
授業の最後の短い時間だったのに、
それぞれの言葉での、たくさんのエールが並んでいた。
「白杖の人を見かけたら、声をかけます。」
「私にできることから実践します。」
「正しく知ることが大切だと学びました。」
「今よりも、いい社会を造ります。」
共に生きていく社会をイメージしてくれていた。
若者達のメッセージを受け止めながら、
ほんの少し、未来の輝きを感じるような気がした。
今時の若者達、結構いいですよ。
少なくとも、僕が学生の時よりは、素敵です。
(2013年7月3日)