バスを降りて、駅へ向かおうとする僕に、
「松永さんですよね。」
女性は笑顔で声をかけてくださった。
「松永さんはどこまでですか?」
「阪急で大宮までです。」
たまたま、行き先も同じだった。
僕は彼女の手引きで歩き出した。
彼女には二人の娘さんがおられて、
下の娘さんは、中学校の福祉体験で僕と出会ったらしい。
上の娘さんは、どこかで僕をサポートしてくださって、
ありがとうカードも持っておられるとのことだった。
本も読んでくださっているとのことだった。
「同じ地域で暮らしているのだから、いつかお会いするかなと思っていましたが、
なかなか会えないものですね。」
彼女は笑った。
中学生の時に出会った娘さんは、大学4回生で就職活動中とおっしゃった。
10年くらいになるということだ。
もう長く盲人をやっているんだなと実感した。
そして、たくさんの人達に支えられて生きているんだなと、
しみじみと思った。
駅に着いて、別れ際に、
「いつかご主人にサポートして頂いたら、家族全員ということになりますね。」
僕はお礼の言葉に付け加えた。
そして、いつか、本当に、
そんな日があるといいなと思った。
(2013年6月3日)