花水木の白やピンクの花の風景を、
ここ数日で何人もの人が届けてくださった。
一緒に歩きながら、
同乗させていただいた車の車窓を見ながら、
あるいはメールで。
実は、僕は、花水木の花を知らない。
もっと、目が見えた頃に、
たくさんの花や木のの名前を憶えておけばよかったと、
今頃後悔はしているのだが、
後の祭りだ。
それは、草花や木だけでなく、
小鳥の名前や、トンボやセミなどの昆虫の種類まで、
すべてに言えることだ。
もっと、いろいろ憶えておけばよかった。
記憶にあるものは、思い出すことができる。
先天盲で見た記憶のないともだちは、
あらゆる画像が、この状態なのだろう。
それは、大変なことなのかもしれない。
でも、人間同士のまじわりは、それを超える力を持っているのも事実だ。
見た経験のない人が、
豊かな感性で生きておられることに気づいて、
心が震えたことは幾度もある。
実際、見えなくても、思い出せなくても、
4月の花水木は、
僕の中では、やさしい春物語のひとつになった。
(2013年4月18日)