ライトハウスでの会議が終わったのは、
20時半を過ぎていた。
サポーターと一緒にバスに乗り、
大宮から電車に乗った。
電車は、結構込んでいた。
サポーターが、僕の手を持って、
吊革を触らせてくれた。
間もなく、僕の前で、何かレジ袋のすれるような音がした。
ひょっとしたらと思った瞬間、
「席をゆずってくださいました。」
サポーターの声がした。
僕は、その席に座り、
「ありがとうございます。助かります。」
声を出した。
席をゆずってくださった人が、
どちらに動いたかまでは判らないので、
その辺におられる方には届くようなボリュームにしている。
しばらくして、電車は桂駅に着いた。
ドアに向かって移動しながら、
「ありがとうございます。」
席をゆずってくれたであろう人に向かって、
サポータが御礼を伝えていた。
あたたかな、やさしい声だった。
改札へ向かいながら、
「20歳代の男性、左手にスポーツ新聞、右手には飲みかけの缶ビール、
モジモジした後、意を決して立ったみたい。
降りる間際、照れくさそうな顔をしていたわ。」
と説明してくれた。
降りる間際の、
サポーターの声が、
とてもやさしかった意味が判った。
「今頃、残りのビール、飲み干しているかな。おいしいだろうな。」
僕は笑った。
(2013年3月16日)