舞鶴へ向かう電車の中で、
中年の男性が声をかけてくださった。
「ひょっとして、松永さんですか?」
福祉専門学校で僕の授業を受けた娘さんのおとうさんだった。
娘さんが卒業して、もう7,8年になる。
当時、娘さんに勧められて、おとうさんは僕のエッセイも読み、
その後、僕が新聞に連載したコラムも読んだとのことだった。
そして、そのコラムを切り抜いて、
他府県で就職した娘さんに郵便で送ってあげておられたそうだ。
だから、当時の新聞などで、僕の顔を記憶しておられたのだ。
電車の中で僕を見かけ、
ひょっとしたらと思い、念のために携帯で僕のHPを確認し、
今日のスケジュールに舞鶴という文字を見つけて、僕だと確信されたとのことだ
った。
出会った学生が、理解や共感を家族に伝えてくれていたこと、
こうして、こんな場所で、こんな形でそれに気づき、
僕は、彼女に、心から感謝する気持ちが湧き上がった。
そして、学生時代の彼女の誠実そうな印象が、
本当にそのままだったことに驚いた。
おとうさんは、その娘さんが、つい先月、結婚されたと話された。
うれしそうに話された。
その言葉のひとつひとつに、
大切に育てた娘さんへの愛情がにじみ出ていた。
一緒に写真をとの申し出を、僕は快く引き受けた。
二人の笑顔のおっさんが、カメラに向かった。
おとうさんは、この偶然の写真を、きっと娘さんに届けるのだろう。
うれしそうに、笑いながら、届けるのだろう。
素敵な娘さんに乾杯!
素敵なおとうさんに、乾杯!
(2012年12月1日)