桜のアンパン

大津市に引っ越してきて3年が過ぎようとしている。
知り合いも少しずつ増えている。
大津市内の図書館のお招きで講演会があった。
定員40名、集まってくださるか不安があった。
関係者から途中の経過報告があった。
うれしいことに定員いっぱいとなり、追加も受けることとなった。
当日は天気にも恵まれ、会場は満席だった。
著書が地元の京都新聞で紹介されたのも後押しになったのかもしれない。
ただ、僕は人生初めてと言ってもいいくらいのひどい花粉症だった。
お医者さんから処方してもらったお薬を飲み、ウガイもし、咳止めの吸引もしたがあ
まり効果はなかった。
鼻水を垂らしながら、咳き込みながらの講演となった。
話を聞きにきてくださった人達には申し訳ない状況だった。
僕は開き直って、その状態で頑張るしかなかった。
いつものように、心をこめて話をした。
皆さん、しっかりと耳を傾けてくださった。
大津市内の視覚障害者の人達も数名きてくださっていた。
ガイドヘルパーさん達も来てくださっていた。
視覚障害者とは一度も話したことがないという人も多くおられた。
小学生も参加してくれていたのはうれしかった。
終了後の空気は皆がひとつになっていた。
僕は満足して会場を後にした。
車で駅まで向かう途中、僕を見つけた知り合いが車に向かって走ってこられた。
窓越しに彼女は僕に小さな包みを手渡しされた。
「この地域にある和菓子屋さんが製造している桜のアンパンです。」
僕は帰宅してすぐにコーヒーを入れてそのアンパンを食べた。
アンパンの上には塩漬けの櫻の葉がトッピングしてあって、桜餡だった。
しみじみとおいしかった。
大津市にきて4回目の春が始まる。
少しずつ故郷となってきているのだろう。
感謝して暮らしていきたい。
(2025年3月25日)