春分の日

春分の日という言葉が気持ちを揺さぶったのかもしれない。
僕は庭に出た。
冷たい空気を感じながら庭に出た。
そして、ゆっくりと歩き始めた。
歩きながら陽だまりを探した。
見えない僕がどうやって陽だまりを探すのか、それは熱だ。
顔や頭で感じる熱だ。
見つけた陽だまりに僕は入った。
身体全部を陽だまりに預けた。
しゃがみこんで顔を空に向けた。
光が顔に降り注いだ。
それから両手の掌で光をすくった。
春の光をすくった。
光はすぐにいっぱいとなって溢れ出した。
指の隙間からもどんどんこぼれた。
僕はふと思い立って、チューリップを植えた場所まで移動した。
去年はプランターだけだったが、今年は玄関の横にも地植えしたのだ。
そっと地面を探った。
だいぶ大きくなったチューリップの茎と葉が手に触った。
もうすぐ蕾が膨らみ始めるのだろう。
また新しい春が始まる。
(2025年3月21日)