雪ウサギ

ニュースは大寒波と告げていた。
近畿地方の平地でも積雪になりそうとのことだった。
30センチくらいになるかもしれないとの予想もあった。
この三日間、僕は朝目覚めると顔も洗わずに靴下を履いてダウンコートを羽織った。
そして少しドキドキしながら玄関ドアのノブを握った。
ワクワクしながらそっとドアを開けた。
雪に埋もれている庭を想像した。
玄関を出て足を差し出した。
ささやかな雪の感触があった。
それから腰をかがめて指先で雪を触った。
ほんの少しの雪があった。
でも数センチはなかった。
立ち上がって空を眺めた。
うらめしそうに空を眺めた。
宝探しに失敗したような感覚だった。
部屋にもどってコーヒーを飲んだ。
ふと、子供の頃作った雪ウサギを思い出した。
いろいろな方向からカメラが近づくような映像が蘇った。
美しい白色だった。
赤い目は南天の実だったのだろうか。
耳は木の葉っぱだった。
口には木炭を使ったような気がした。
ひょっとしたらもう60年くらいになる記憶だ。
雪ウサギの横に幼い妹の笑顔があった。
宝探し、うまくいったのだと思った。
(2025年2月25日)