講演の手土産に頂いたドーナツを朝食に食べた。
程よい甘さ、質、量、高いクォリティを感じた。
原材料も吟味されているのだろう。
甘すぎることもなく、コーヒーによく合った。
このドーナッツを作っているのは福祉団体だ。
18歳以上の知的障害者、発達障害者、精神障害者など困りを持つ人達の就労と生活
を支援する場として20年近い歴史を育んでいるらしい。
最初からうまくいくはずはない。
利用者さんと職員さん達の日々の試行錯誤、まさに努力がこの製品を生み出したのだ
ろう。
お菓子職人の人達と同じような熟練の技を感じた。
この福祉団体の研修会の講師としてお招きを頂いたのだ。
開始時刻は17時半だった。
それぞれの職場で仕事を終えた人達がギリギリで会場に駆け込んで来られた。
研修は定刻に始まった。
僕はいつものように、視覚障害の意味、現状、課題などを説明した。
テーマのひとつになっていた虐待についてのコメントもはさんだ。
そして、障害って何だろうと皆さんに問いかけた。
僕の目の前にはいつもと変わらないグレー一色の世界が横たわっていた。
それでも会場の空気はいろいろなことを僕に教えてくれるから不思議だ。
皆さん、一生懸命に話を聞いてくださっているのが伝わってきた。
僕は最後に、一人の障害者として皆さんに感謝を伝えた。
講演の依頼を受けた時に、一番伝えたいと思ったのは「ありがとう」だった。
僕がそうであるように、障害を持った人達が生きていくにはいろいろな人の力が必要
だ。
その力が僕達の幸せに関わってくるのだ。
そしてその力はまさに人間の持つやさしさの中にある。
福祉の現場、課題はいろいろあり、大変なことも少しは理解しているつもりだ。
だからこそ、ありがとうを伝えたかった。
最後の一片を食べて、コーヒーを飲み干した。
今度は自分でこのドーナッツを買いに行こうと思った。
(2025年2月20日)