不似合いのネクタイ姿

きっとまだ暗いのだろう。
6時過ぎには家を出て歩き始めた。
年に数回だけネクタイをする機会がある。
窮屈な感覚が嫌なので好んではしない。
スーツは上下が同じ生地、同じ色だから着やすいという利点がある。
だから、いつもの僕はマオカラーのスーツだ。
スーツでありながらネクタイをしなくてもいい。
人前に出てもあまり失礼にもならない。
僕には有難い服なのだ。
今日はネクタイをしなければいけないのでいつもとは違うスーツだ。
きっと七五三みたいなのだろうと思う。
ネクタイは直前までポッケに入れてある。
会場に入る前にするつもりだ。
今日は「視覚障害者ガイドヘルパーの日」という記念日だ。
その祝賀のイベントが東京で開催されるのだ。
全国の仲間がオンラインでつながる。
それぞれの地域のそれぞれの仲間が思いを語る。
全国から選ばれたガイドヘルパーさん、事業所、同行援護研修の講師の方々の表彰式
などもある。
僕もそれに出席するのだ。
関係者は12時までに会場に到着するようにとの案内がきたので早朝出発となった。
会場に入る前に食事も済ませなければいけない。
よく当事者運動という表現をされるが、結構きついこともある。
こうして東京まで出向くということもそうかもしれない。
日当が出るわけでもないし、特別にいいこともない。
それでも帰りの新幹線の座席には疲労感と充実感と喜びがあるから不思議だ。
誰かの役に立っているのかもしれないという気持ちが支えてくれているのだろう。
僕も一人の当事者としてしっかりと感謝を伝えよう。
同行援護という素晴らしい制度、大切にしなければと思う。
不似合いのネクタイ姿はお許しください。
(2024年12月3日)