子供の頃、キンモクセイの香りを小瓶に詰めて持ち帰ったことがある。
そんな思い出を話してくれた人がいた。
その話を聞いた時、僕は不思議なやさしさに包まれた。
彼女の小学生時代を知る由もないのだが自然に想像は膨らんだ。
小瓶を持った少女は空に向けて小さな手を動かしたに違いない。
こぼれないようにしっかりと栓をして走って帰ったはずだ。
家に帰り着いて、そっとその栓を開けたのだろう。
想像しただけで笑顔になった。
そんな思い出のある人と出会えたことを幸せだとその時思った。
そして、キンモクセイの香りに出会う度にその話を思い出す。
その人を思い出す。
どこかで元気でいてくださるようにと心から願う。
(2024年10月31日)