秋風

主催は更生保護女性会と伺っていた。
当日の会場には、食生活改善推進委員の方、女性団体連絡推進協議会の方、民生児童
委員の方、いろいろな立場の方が来てくださっていた。
祁答院や霧島などずいぶんと遠方からも来てくださっていた。
参加者数も僕の予想より多かった。
僕は感謝を噛みしめながら話をした。
心を込めて、そしてしっかりと未来を見つめながら話をした。
講演が終わって、ふと思った。
滋賀県大津市で暮らす無名の僕がそんなに多くの参加者を集められるわけがない。
関係者に尋ねてみた。
やはりいろいろと動いてくださった人がおられることがわかった。
彼女は手作りのチラシまで作ってあちこちに声をかけてくださったようだった。
以前、僕の話を聞いてくださった彼女は、その話をまた別のお知り合いにも聞いて欲
しいと思ってくださったのだ。
「理解は共感につながります。
共感は力となります。
力は未来を創造すると僕は信じています。」
最初に出版した著書の後書きに僕はそう書いた。
そして、その種を運ぶ風になってくださいと願いを書いた。
その本が出版されてから20年の歳月が流れた。
ベストセラーにはならなかったがロングセラーとなった。
11刷を迎えた本は今でも少しずつ社会に運ばれていっているようだ。
そして、講演回数も千回くらいにはなったかもしれない。
そこには風になってくださったたくさんの人達がおられるのだ。
未来がどれだけ創造されたのか、それはそんなに胸を張れる答えは出ていない。
まだまだ僕の努力不足もあるのだと思う。
だからもうちょっとは頑張らなくちゃ。
別れ際に彼女はハロウィンの袋に入ったお菓子を僕の手にそっと載せてくださった。
頑張ってくださったのに、頑張ったよとはおっしゃらなかった。
さりげなく、僕もそうありたい。
もうすぐ、秋風がそよぎ始める。
(2024年10月10日)