以前から思っていた。
京都駅を単独で利用できるようになりたい。
京都駅の構造はだいたい頭に入っている。
ただ、利用者の多さが半端じゃない。
1日平均の利用者数が30万人の駅だ。
キャスター付きの旅行バッグを引っ張って移動している観光客もとても多い。
場所によっては修学旅行の学生達の集団にも出会う。
外国人の利用者も多い。
点字ブロックの意味を知らない外国人も多くおられるようだ。
点字ブロックは日本で生まれたもので、世界中で使用されているものではないから仕
方ない。
その中を白杖一本を頼りに動くのは至難の技だ。
分かっているからこそやってみたくなるのかもしれない。
昔からチャレンジ精神だけは旺盛だ。
少しずつできるところから練習した。
湖西線の電車を降りてから電車の後方にひたすら歩く。
このホームには転落防護柵はないから慎重に歩かなければいけない。
一人もぶつからないで動くということはあり得ない。
小鳥の鳴き声放送で地下道への入り口を探す。
階段を降りて点字ブロック沿いに北に向かえば改札の音が聞こえてくる。
京都駅東改札口だ。
このルートは行けるようになった。
地下鉄の乗り換えにはよく利用している。
この逆の動きがまだできない。
3番線の手掛かりになる音を探すのが大変なのだ。
だから駅員さんにサポート依頼をしていた。
そして前回、目が見える友人に単独移動の練習を見守ってもらった。
トイレの放送やエスカレーターの音を頼りに動けばなんとかなりそうだと思った。
チャレンジした。
ホームにつながる階段の前で3番線かなと思案していた。
「何か困っておられますか?」
女性の声だった。
「3番線ホームに行きたいのです。この階段ですか?」
「違います。ここは5番ホームに行く階段です。私が案内しましょう。」
チャレンジは見事失敗していたのだ。
エスカレーターの音を一か所聞き逃したのかもしれない。
彼女は僕に肘を貸してくださった。
駅の関係者か尋ねたら、一般の人だった。
「時間は大丈夫ですか?」
僕は申し訳ないと思って尋ねた。
「大丈夫なので安心してください。」
爽やかな答えだった。
僕は甘えることにした。
エスカレーターがホームに着くタイミングで彼女に尋ねた。
「左側、3番線に電車はいますか?」
始発の電車が既に待機していた。
「発車時刻の案内を読んでください。」
彼女は僕の依頼を的確に処理してくださった。
「あと一分です。なんとか間に合いそうです。先頭車両です。」
なんとか間に合った。
彼女に感謝を伝えてありがとうカードを手渡した。
「貴方がいなかったら、この電車には間に合わなかったです。ありがとうございまし
た。」
それからすぐにドアが閉まった。
結局今日のチャレンジは失敗ということになるのかもしれない。
でも、彼女のサポートとの出会いも含めて成功と思ってしまうのが僕の前向きなとこ
ろなのだろう。
前向き、いや図々しさかな。
この図々しさも僕が単独で動くための大切な部分です。
失敗は成功の基、そう思うのも図々しさかなぁ。
また次回もきっとチャレンジします。
(2024年9月6日)