未熟児網膜症の彼は小学校4年生の時に最初の挫折を味わった。
画数の多い漢字が黒い塊に見えて読むことが難しくなったらしい。
中学校で英語と出会ってから英語に興味を持つようになった。
英語が好きになっていったのだ。
自分の目で読める大切な文字だったのかもしれない。
大学も外国語大学の英語科に進学した。
そして英語検定にも挑戦した。
準1級までは合格できたが1級は無理だった。
合格率1割のあまりにも高過ぎる壁だったのだ。
英検1級は夢となった。
卒業してもなかなか就職はできなかった。
彼の目は白内障にも緑内障にもブドウ膜炎にも罹患してしまった。
その目で人生を刻んだ。
50歳になって彼は再度英語検定1級に挑戦を始めた。
若かった頃挑んだ夢への再挑戦だ。
弱視のために拡大文字、1.5倍の試験時間が保障されたが試験問題は皆と同じだった。
幾度も受験し跳ね返された。
それでも彼はあきらめなかった。
9年目の挑戦、神様が微笑んだ。
彼は照れくさそうに報告してくれた。
恥ずかしいとも表現した。
ひたむきに夢を追い続けてきた彼を僕は心からかっこいいと感じた。
いつまでも夢を追うことの大切さを教えてもらったような気になった。
僕はお祝いのランチをすることにした。
(2024年8月2日)