JRは信号の不具合などで遅れることが多い。
営業範囲が広いから影響も広域になるのかもしれない。
この予定外が起こると僕は大変だ。
今朝もそれに巻き込まれてしまった。
通勤時間帯だったのでホームで電車を待つ人がどんどん増えていった。
いつもとは違う緊張感があった。
20分遅れの電車はまさにすし詰め状態だった。
僕は白杖を握りしめてその流れに入った。
なんとか乗車したが手すりを探す余裕はなかった。
どこも掴む場所がない状態でずっと立っているのは本当に難しい。
電車がカーブしたり減速したり、幾度も身体が揺れ動いた。
やっとの思いで乗換駅に着いた。
点字ブロックを探して歩き始めた。
次の電車も混んでいるかもしれないと憂鬱を感じながら移動していた。
「お手伝いしましょうか?」
若い男性の声だった。
僕は喜んで彼の肘を持った。
途中までは同じ経路と分かったので、僕達はいろいろな会話をしながら歩いた。
点字ブロックの話になり、それが日本で生まれたものだと僕は説明した。
そしてその恩恵を受けていることも伝えた。
彼はそれが素晴らしいと納得しつつもふと漏らした。
「僕はしばらくフランスで暮らした経験があります。点字ブロックは確かにありませんでした。でも、周囲の人達が手伝うのが普通でした。」
とても意味のある言葉だと僕は感じた。
点字ブロック、転落防護柵、とても有難いしもっと増えて欲しい。
でも、もし周囲の人が普通にサポートしてくださるならなくてもいいのかもしれない
と思った。
「白杖の人を見かけたら、とりあえず声はかけるようにしています。
そして必要だったらお手伝いすることにしています。」
彼の落ち着いた口調が彼の飾らない日常を映し出していた。
自然体だった。
こういう若者が少しずつ増えてきていると感じるのはグローバルな社会になってきて
いるということなのだろう。
未来が楽しみだ。
(2024年6月14日)