土砂降りの雨が止んだ。
雲の隙間から少しだけ青空が顔を覗かせた。
僕達は水たまりを避けながら歩いた。
ガイドの学生が突然つぶやいた。
「水たまりに青い空が映っています。」
瞬間、僕は地面を覗き込んだ。
見えなくなってからは初めての経験だった。
思い出そうとしたがなかなか実際の映像には結びつかない。
でも、確かに、見えている頃に見たことがある。
蜃気楼とか虹とかそういう種類のものだ。
光達の悪戯なのだろう。
そしてその悪戯はいつも幸せを運んでくれたような気がする。
足元に空がある。
ちっちゃな水たまりに大きな青い空がある。
そう思ったら幸福感が僕を包んだ。
見えても見えなくても関係ない。
光達、凄いなぁ。
とっくの昔に失くしていた大切な写真を見つけ出したような気になった。
2024年3月13日)