彼女は、下御霊神社からの風に誘われるように、
ひょっこりと、町家カフェさわさわに入ってきた。
そして、僕を見つけ、声をかけてくれた。
5年前、どこかの駅で、僕のサポートをしてくれたらしい。
それから、僕の著書も読んだとのことだった。
またいつか、どこかで会えればと思いながら、
5年という時間が流れたのだという。
毎日、どこかで誰かが、サポートの声をかけてくださる。
バス停まで、お店の入り口まで、駅の改札まで・・・。
そういう人達がいてくださるから、
僕達の毎日が存在する。
毎回感謝を込めて、お礼を伝えるけれども、
記憶することはできない。
何も画像のない僕にとっては、
声や雰囲気だけで記憶するのは、
それは無理なことなのだ。
見知らぬ人、いや、見知ることができない人、
時には、年齢どころか、性別さえ判らないこともある。
ただ、絶対に間違いないのは、
「にんげん」だということ。
やさしいとか、あたたかいとか、
心を持った、
「にんげん」という素敵な生き物だということ。
それにしても、不思議だなぁ。
僕がさわさわに顔を出せるのは、一週間に数時間程度。
それでも、こんなこともあるのだから、
やっぱり、人生って面白い。
(2012年10月12日)