夜の料理屋さん、ご馳走が次から次へと運ばれてきた。
ふとしたきっかけで知り合った視覚障害者の先輩がお招きくださったのだ。
彼の眼は30歳台に事故に巻き込まれて光覚状態になったらしい。
僕より一回り以上年上だから、視覚障害者として生きてこられた人生は僕の倍くらい
の長さということになる。
お互いの顔を確認できない僕達はそれでも笑顔で乾杯した。
サポートに着いてくださった女性は慣れておられるようで、そっとそして的確に僕達
に寄り添ってくださった。
何の問題もなく僕達の話は深まっていった。
彼はいろいろな話をしてくださった。
どの話題にも共通していたのは社会に対する愛情だった。
そしてそこには色褪せない力を感じた。
まさに現役ということだ。
見えるとか見えないとか無関係にそれぞれの人にそれぞれの生き方がある。
未来を見つめて活動しておられる人には輝きがある。
出会う度に僕自身もそうありたいと願ってしまう。
願うということは自分自身の未熟さや愚かさを感じてしまうのかもしれない。
それでもそういう人達と過ごす時間は好きだ。
憧れるのかもしれない。
豊かな時間だ。
そしてそれは人生の宝物となることは分かっている。
先輩がそっと教えてくださったこと、これからに活かしていきたいと素直に思った。
味覚も脳も心も満足して店を出た。
天気予報の雪は外れた。
明日は立春と気づいてうれしくなった。
(2024年2月4日)