三連休の最終日、やっと僕にも休日が訪れた。
HPのスケジュールには、関わっている団体の会議などは掲載していない。
空白でも、会議などが入っている日はしょっちゅうで、
何も用事のない、いわゆる休日は、
一ヶ月に二回くらいのペースだ。
もうちょっとのんびりした時間が欲しいなと思うことはあるけれど、
こうして毎日、社会に参加できるということは、
失明直後の数年間を思えば、
とても幸せなわがままだということは判っている。
それに、55歳という年齢を考えると、
今が一番頑張れる時期なのかもしれないとも思う。
でもやっぱり、休日は、とてもうれしい。
休日だというだけで、幸福感を感じてしまう。
昼時、近所で暮らす両親と近くのレストランで食事した。
90歳を超えた父は、まず、歩くのが大変になっている母の手を引いて、
レストランへ行く。
母を、椅子に座らせて、
それから、僕を、団地の下まで迎えにくる。
僕は一人でレストランまで行けると説明しても、
聞き入れてくれない。
僕を手引きして、母の待つレストランへ歩く。
肘から伝わってくる歩き方に、
父の足元も随分不安になっていることを知る。
補聴器の耳に向かって、
「たまには散歩してるの?」
やっぱり、聞こえていないらしい。
横断歩道を渡って、
交差点の角を曲がろうとした瞬間、
僕の顔のななめの空中が破れて、
ほんの少しの、キンモクセイの香りがこぼれた。
こんなところで、今年初めての香り、
神様って粋だなって微笑む。
鼻も悪くなっている父には、わからないだろう。
だから、僕は止まることもなく、何も告げずに歩く。
しばらく歩いて、
レストランの玄関に着いた時、
「風が気持ちいい。秋になったなぁ。」
突然、父がつぶやいた。
休日って、やっぱりいいな。
(2012年10月8日)