袋は5つに分けてあった。
それぞれの袋にはチューリップの球根が3つずつ入っていた。
大きな立派な球根だった。
そして、それぞれの袋に点字で色を書いてあった。
赤、白、黄色、桃、白桃。
僕はプランターを3個準備した。
それぞれのプランターに土を入れた。
土の上に5つの色の球根を並べた。
それから球根の高さの倍くらいの穴を掘って丁寧に埋めた。
埋め終わってジョーロでたっぷりの水をかけた。
僕が光を失ってもう25年くらいになる。
彼女は20年くらいだそうだ。
そんなに長い時間、僕達は色を見ていない。
そして、もう見ることはないだろう。
彼女の故郷はチューリップが有名らしい。
草花を育てることが趣味のひとつになっている僕にプレゼントしてくれたのだ。
「私の好きな色で選んでしまいました。」
彼女からのメッセージにはそう書かれてあった。
彼女が選んでくれた色を僕はとても愛おしく感じた。
「春に待ってるからね。」
僕は言葉をわざと口に出してチューリップに伝えた。
咲いたら彼女に真っ先に伝えてあげたいと思った。
一緒にその色を思い出す。
間違いなく、それは幸せの瞬間になる。
(2023年11月13日)