彼女の家の庭には今年も白い彼岸花が咲いたらしい。
お彼岸の頃に決まって咲いてくれることにいつも感激するとのことだ。
確かにそれは僕もそう思う。
ここ数日、ラジオからは日本各地の彼岸花の開花の便りが流れた。
日照時間とか降雨量とか毎年違うはずなのに不思議だ。
僕は少しだけの理科の知識で答えを出そうと頑張った。
「神様が小鳥さん達を使者にして彼岸花に伝えてくださってるんだと思うよ。」
彼女は当たり前のように笑った。
だから、咲いてくれた彼岸花にありがとうって話しかけているらしい。
僕の頭の中で映画のワンシーンのような映像が流れた。
真っ白な彼岸花の前に彼女は腰を降ろしている。
空は雲一つない綺麗な青空だ。
彼女はつぶやきながら真っ白な彼岸花を見ている。
何か話しかけているのかもしれない。
その言葉は聞き取れない。
聞き取れなくていいんだ。
答えの出ないことが大切なこともある。
生きていくってそんなことの繰り返しなのかもしれない。
暑さ寒さも彼岸まで。
確かに朝夕ちょっと涼しくなった。
朝のホットコーヒーがおいしくなったように感じる。
気温と味覚の関係、考えるのはやめておこう。
(2023年9月24日)