台風が去った後、庭を見て回った。
僕が見るというのは触るということだ。
あちこちを触り回った。
朝顔の鉢植えはいつもの場所にはなかった。
玄関の2つも裏庭の1つもそうだった。
僕はその辺りを歩幅を小さくしてゆっくり歩いた。
間もなく足が鉢に当たった。
風で飛ばされてひっくり返っていたのだ。
僕はその鉢をそっと抱えて元の場所に戻した。
それから葉っぱや茎、弦などを恐る恐る触った。
幸いひっくり返っただけで大きなダメージはなさそうだった。
ちょっとだけ安堵した。
それからあちこちのひまわりを見て回った。
愕然とした。
何本ものひまわりが倒れかかっていたし、実際倒れてしまっているのもあった。
そして、数本のひまわりは途中から折れてしまっていた。
自転車のハンドルの太さくらいはある丈夫な茎がぽっきりと折れてしまっていた。
僕はしばらく立ちすくんだ。
それから麻ひもとハサミと支柱を準備した。
倒れかかっているものは新しく支柱を立てたり麻ヒモで近くの鉄柱に結んだりした。
折れてしまっているものはどうしようもなかった。
ごめんねと呟くしかなかった。
悔しかったし悲しかった。
僕はまだ咲いてくれている花の部分を切り取って花瓶にさした。
そしてそれを玄関の脇に飾った。
誰かがくるわけではない。
庭に集う虫や鳥達が見てくれると思ったのだ。
それにしても凄まじい風だったんだなと改めて思った。
確かにうなり声をあげていたことも思い出した。
あちこちの被害が大きくありませんようにと心から願った。
そして、ありがとうとひまわりに伝えた。
僕にとってはひまわり台風として記憶に残るのだろう。
(2023年8月17日)