天気予報通りの厳しい暑さだった。
お日様は容赦なく光を放ち熱を地上にばらまいておられた。
バス待ちのわずかな時間でも僕の意識はクラクラするような感じだった。
そっと風が吹いた。
風というほどでもないささやかなものだった。
その瞬間聞こえた。
チリン。
小さな小さな音だった。
また少し風が吹いた。
チリンチリン。
今度は音色は主張をしてくれた。
どこからともなく聞こえてきた風鈴の音色。
心がやさしくなるのを感じた。
いつの頃からなのだろう。
どんな人が始めたのだろう。
夏に似合うってどうやって発見したのだろう。
いろいろなことを考えながら人間の感覚の豊かさをしみじみと振り返った。
さりげなく誰かにやさしさを届けられたらいいな。
帰宅したら僕も風鈴をつりさげようと思った時、バスのエンジン音がした。
(2023年7月18日)