何となく気になった。
傘をさして長靴を履いて庭に出た。
7本のひまわりには先日竹の支柱を立てたばかりだった。
そして倒れないように麻ヒモでくくった。
ひょろひょろとやせっぽっちの背高のっぽにたいに感じたからだった。
強い雨風、倒れていないかと気になった。
頭の中の地図に従って郵便受けを探した。
金属製なので触って分かりやすい。
それを確認してそっと腰を降ろした。
左手で傘を高めに持って右手で空中をそっと探った。
竹の支柱が手に触れた。
支柱の上から下にそっと手を動かした。
雨に濡れたひまわりの葉があった。
活き活きとうれしそうに立っていた。
また少し伸びたように感じた。
「雨が空から降れば思い出は地面にしみこむ
雨がシトシト降れば思い出もシトシトにじむ」
好きな歌のフレーズが口からこぼれ始めた。
雨の音で近所には聞こえないと思った。
僕は少し大きな声を出して歌った。
途中で歌詞がわからなくなって同じ部分だけを幾度も歌った。
傷のついたレコードみたいだった。
それさえもうれしくなった。
歌いながらひまわりの葉や茎を幾度も触った。
僕にとってはそれが見るということだ。
竹の支柱を目印に7本のひまわりを全部触った。
7本のひまわりを全部見た。
見な元気で安心した。
雨風が去った後には夏も近づいているのだろう。
キラキラの夏が待ち遠しい。
(2023年6月6日)