母の日

母の日の朝の電話はいつものように短いものだった。
聴力が落ちてきている母への長電話は負担になると思っている。
だから、いつも短いありきたりの言葉を継げる。
「今日も頑張ろうね。」
それに天気の様子を付け加えるくらいだ。
母の日はそれにありがとうをそっと添えた。
「身体さえ元気でいたらいいからね。」
僕の言葉ではない。
96歳の母から僕に返ってきた言葉だ。
66歳の息子はいつまでたっても情けない。
その言葉がありがたくてありがたくて目頭が熱くなる。
元気でいよう。
元気で頑張ろう。
しっかりと生きていこう。
子供の頃のアルバムにあった微笑んでいる母の顔が浮かぶ。
うん、元気で頑張るよ。
(2023年5月16日)