早朝、7枚のありがとうカードを胸ポケットに入れて家を出た。
一日の仕事を終えて地元の駅に帰り着いたのは19時を過ぎていた。
階段に向かおうとして方向を見失った。
そのタイミングで女性の声がした。
「階段はこっちですよ。」
僕はその声に促されながら会談を降り始めた。
ナイスタイミングというやつだ。
途中で彼女にありがとうカードを渡そうとした。
指先が乾燥していてうまくカードを掴めなかった。
2枚重なっていたようで1枚バックしてもらった。
すべての人にお渡しすることは場面によって難しいことがある。
ということは今日は少なくても6名以上の方のサポートを受けたということになる。
6名の方にありがとうカードを渡すことができたのだ。
その6つの場面を全部記憶しているわけではない。
ただ、今日はどれもがナイスタイミングのサポートという印象だった。
だから予定よりもすべて少し早く動けた。
そんなことを思いながら改札を出ようとした時だった。
「サポートする?」
一瞬でいつかのアメリカ人の留学生だと分かった。
4回目の出会いだった。
ありがとうと言いながら彼の肘を持った。
改札を出て階段を降りた瞬間、出発間際のバスが見えたようだった。
「バス、急ぐ。」
僕達は二人で走った。
いや、正確に言えば、僕は彼に引きずられながら走った。
バスに乗車して優先座席に座ったタイミングでバスのドアが閉まった。
きっと僕達に気づいた運転手さんが待っていてくださったのだろう。
2メートル近いアメリカ人に白杖のちっちゃいおじさんがぶらさがりながら走ってき
たのだ。
想像しただけで楽しい絵だった。
僕が降りるバス停に到着するまでの5分間程度、僕達は車中でいろいろ話した。
どれくらい見えているかとの質問に光も感じないと答えたら驚いていた。
「君のサポートがなかったら、僕はこのバスに間に合っていないね。ナイスタイミン
グ!」
彼もうれしそうだった。
7月には帰国するらしい。
日本の印象を尋ねたら漢字が難しかったと笑った。
「合えないと思うと淋しくなるね。」
僕は伝えた。
「ありがとう。」
上手な日本語だった。
それまでにもう一回でも会えたらいいな。
またタイミングの神様が微笑んでくださるようにと思った。
それにしても6枚のありがとうカードを渡せた日となった。
幸せいっぱいの日となった。
(2023年4月25日)