7時前に家を出た。
同行援護研修の実技の日だった。
僕が力を入れている活動のひとつだ。
同行援護というのは視覚障害者の外出を保障する制度だ。
そしてそれを担う人達をガイドヘルパーと呼ぶ。
ガイドヘルパー養成の講座に当事者の思いを届けるのが僕の役目だ。
研修は座学と実技の両方があるのだが今日は実技の日だった。
9時から17時、受講生にとっても講師にとってもハードな一日だ。
地下鉄に乗り換えるために山科駅で電車を降りた。
日曜日の7時半、駅は平日と違って閑散としていた。
僕は階段の方向を確認するために耳を澄ませた。
階段では小鳥のさえずりの放送が流れている。
僕達に階段の場所を知らせるためのものだ。
ところが今朝はそれが電車を降りた正面から聞こえた。
あれっと思った瞬間にそれが本物の小鳥のさえずりだと分かった。
元気にそして一生懸命に鳴いていた。
階段にある小鳥のさえずりを探そうとする僕には本当はそれは邪魔なものだった。
でも笑顔になってしまった。
僕に向かって頑張れと言ってくれているようにも思えた。
僕はしばらく立ち止って朝の小鳥のさえずりを楽しんだ。
「ありがとう。頑張るよ。」
僕は心の中でつぶやいて歩き出した。
(2023年4月17日)