電車が遅れたりすることはたまにある。
仕方がないことだと思う。
僕の最寄りの湖西線は冬は強風で止まることがあると聞いている。
それにしてもJRは特にトラブルが多いような気がする。
広域のシステムのせいなのだろう。
今朝は神戸線の信号トラブルの影響を受けて僕の乗車していた電車は大津京駅で止ま
ってしまった。
こういう非日常は視覚障害者は苦手だ。
京都方面に向かう人は反対側の電車に乗り換えるようにとのアナウンスが流れた。
僕も人並みに動かされながらホームに降りた。
日常利用しない駅、混雑、恐怖心が強くなってヨチヨチ歩きだ。
僕に気づいた女性の方が肘を持たせてくださった。
その瞬間ほっとした。
なんとか乗車して山科駅に着いた。
ここで地下鉄に乗り換えるのだがこれまた凄い人だった。
他の交通機関に乗り換えるために一斉に乗客が動くのだ。
いつもなんとか動ける駅ももみくちゃ状態になりまた恐怖心が身体を固くした。
気づいた方がまた肘を持たせてくださった。
一緒に地下鉄の山科駅まで行き電車に乗せてもらった。
お二
人とは降りる駅が違うので僕はそこで感謝を伝えて別れた。
僕は電車の入り口の手すりを持って過ごした。
やっとスタッフと待ち合わせの三条京阪駅に着いた。
そこから学校に向かった。
専門学校の卒業式に出席するのが目的だった。
時間の余裕を持って動いていたので楽に間に合った。
おごそかな空気の中で卒業式のセレモニーが進んだ。
最後に皆で記念写真を撮った。
僕は自分で見ることはない写真だが学生達の門出を祝って笑顔でカメラマンの方を向
いた。
会場を出る時にベトナムの女子学生がアオザイという民族衣装を触らせてくれた。
デザインを説明してもらいながらその華やかさが伝わってきた。
「よく似合うね。おめでとう。」
僕は自然にそう言った。
見えないのに出た言葉だったが自分でも不自然とは思わなかった。
「先生のネクタイもよく似合うよ。」
僕は笑顔でお礼を伝えて帰路に着いた。
今朝の電車を思い出した。
これからの彼女たちの人生、きっといろいろあるだろうな。
幸せな人生であって欲しいな。
心からそう願った。
(2023年3月17日)