毎年立春の前後のこの時期だ。
故郷の小学校時代の友人からキンカンが届く。
春姫というブランドのキンカンだ。
春姫と名乗るには一定の糖度と大きさが条件らしい。
生産者の方のご苦労が偲ばれる。
春姫を水洗いしてそのまま口に放り込む。
大粒だから口が膨らむ。
果汁が口から飛び出さないようにしっかりと唇を閉じてゆっくりと噛みしめる。
とっても甘い、そしてほんのりと酸っぱい味覚が口中に広がる。
脳の中で美しい橙色が蘇る。
濃い橙色と薄い橙色だ。
そこに薄い黄緑色と黄色が少し混ざる。
グラデーションがゆっくりと動きながら輝く。
無条件の幸せを確認したら準備しておいた屑籠に種を吹き出す。
幸せをこぼさないように気をつけて吹き出す。
今年の春が始まる。
(2023年2月5日)