手探りでデスクの端にある電気ポットを探す。
コードを取り出してこれまた手探りでテーブルの上にあるコンセントにつなぐ。
それからポット本体だけを持って洗面台に向かう。
ポットの蓋を外して蛇口にあてる。
ポットを持っている手で感じる重さと変化する音を頼りに水道水を入れる。
元の場所にもどったらそのポットをセットしてお湯を沸かす。
沸かし始めた音を確認したらコーヒーカップにスティックコーヒーの粉を入れる。
持参したいつものイノダコーヒーだ。
沸騰したお湯を少しずつカップに注ぐ。
一番集中する瞬間だ。
こぼしたらいけない。
少し注いでカップを持つ。
重たさを確認するのだ。
それを数回繰り返してモーニングコーヒーの準備終了。
スマートフォンのシリを呼び出してリクエストする。
「朝のクラシックを聞きたい。」
音楽の中でコーヒーを飲みながら静かに時が動き出す。
東京のホテルでの三日目の朝が始まる。
コロナの影響で3年ぶりとなった研修会は定員を上回る応募があった。
4日間連続の研修会は結構ハードなカリキュラムとなっている。
受講生も僕達スタッフも体力が必要だ。
あとどれくらい僕は関われるのだろうとふと思ったりしてしまう。
とにかく関われる今は頑張るしかない。
受講してくださった人達に思いと感謝を伝えるのが僕の役目だ。
コーヒーを飲み終えて身支度を始める。
白杖のグリップを握った右手に少し力が入る。
いい仕事をしたいと思う。
(2022年10月28日)