兵庫県の田舎で暮らす友人からのメール。
「今年は彼岸花の開花が遅いようで、
今朝はまだ蕾が朝露に濡れて太陽に照らされていました。
一年で一番深呼吸をしたくなるこの季節に
稲穂の傍らであぜ道を赤く染めるように咲くこの花が
僕はとても好きなんです。
心地良い、おだやかな貴重な季節を楽しくお元気でお過ごし下さい。」
たったこれだけの文章が、
実った稲穂の銀色、
高く澄んだ青空、
彼岸花の見事な朱色、
そして、この国の、素敵な秋を、
僕に届けてくれた。
友人と言っても、僕はまだ、彼と会ったことはない。
ふとしたことで知り合って、何度かのメールをやりとりしただけだ。
つい先日も、別の友人から、
大阪の街の空で見つけた虹の風景が届いた。
確認できた色を並べてあった。
その文章を読んだ時も、僕は幸せな気持ちになった。
見えないことは、仕方ない。
人間は、あきらめる勇気も、我慢する力も持っている。
だから、見えない日常で、
いちいち落胆なんかしていない。
それなりの喜怒哀楽に包まれた、
それなりの日々が存在している。
でも、こうして、目を貸してくれる人達との交わりは、
見えなくなってから知った、
人間社会の素敵な事実だ。
ひょっとしたら、見えている頃に気づかなかった風景が、
いや、見過ごしていたかもしれない季節の色合いが、
そっと届けられる。
ちょっと贅沢な気分になる。
ラジオの天気予報が、今日の降水確率0%を告げた。
よし、今日はどこかで、両手を広げて、
思いっきり深呼吸しよう。
秋の空を眺めながら、
思いっきり深呼吸しよう。
これを読んでくださっている貴方も、どこかでどうぞ!
(2012年9月27日)