バスを降りたタイミングで声をかけてくださった。
「二条駅まで一緒に行きましょうか?」
彼女はライトハウスで開催されたガイドヘルパー現任者研修を受講しての帰路、
僕はその研修の講師を終えての帰路だった。
緊張しますとおっしゃったがとても落ち着いて対応してくださった。
基本姿勢の形も歩くスピードも道の情報提供も完璧だった。
階段では最初と最後はしっかりと止まって教えてくださった。
結構な数の階段を歩いたが彼女の呼吸はまったく変化がなかった。
地下鉄の椅子への誘導も自然だった。
車内の雰囲気を察しての沈黙もさすがの対応だった。
ありがとうカードをお渡した時だけはうれしそうにされた。
65歳で定年退職になってからガイドヘルパーの仕事を始めたから70歳を超えたけど新
米だとおっしゃった。
僕は信じられなかった。
彼女のどこにも老いはなかった。
最近、僕は何歳まで頑張ろうかなどと考えることが多かったのだがそれが恥ずかしく
思えた。
数字にこだわる必要はないのかもしれない。
頑張れる間は頑張ればいいのだと自然に思えた。
人生の先輩達にいろいろと教えられてきた。
いつになったら僕はそんな先輩になれるのだろう。
ちょっと恥ずかしくなった。
このまま70歳の青年になれればいいな。
(2022年9月5日)