バケツとイス、それにカゴを持って庭に出る。
イスは百円ショップで購入したお風呂用のイスで軽くて大きさも丁度いい。
カゴの中にはスコップ、剪定ハサミ、蚊取り線香、スポーツドリンク、ハンディ型扇
風機などが入っている。
麦わら帽子をかぶって作業服、靴は運動靴だ。
作業服の胸ポケットにはアイフォンが入っている。
アイフォンにはアップルミュージックのアプリが入れてある。
「ユーミンを聞きたい。」
シリに話しかければすぐに対応してくれる。
好きな音楽の中で草取りをしている時間が至福のひと時となっている。
指先の感覚で雑草を確かめる。
根から引き抜くようにしているが時々失敗して途中で切れる。
切れると悔しい。
難しそうな草を上手に引き抜けた時は逆にうれしい。
抜いても抜いても生えてくる。
ほとんど無意味に近い作業なのかもしれない。
無意味なことに夢中になっている自分自身がうれしい。
子供の頃に帰っているのかもしれない。
必死でやっている時、見えていないということも忘れている。
いや、見えていたということを忘れているのかもしれない。
見えなくなってから長い時間が流れたということなのだろう。
アリンコ、バッタ、ハチ、トンボ、ナメクジ、ミミズ、いろんな命と遭遇する。
頭上ではいろいろな鳥が歌ってくれる。
それぞれの命を感じると自分の命もうれしくなる。
そしてたまに吹いてくれる風を感じてそこにも命があると気付く。
世界中のすべての命が平穏であって欲しいと心から願う。
(2022年8月5日)