坂道を登ったところで振り返った。
琵琶湖が見えると教えてもらった。
僕は視線を遠くに向けた。
風が京都と少し違うように感じた。
琵琶湖を渡る風がこれからの僕の人生に寄り添ってくれるのかもしれない。
そう思うととても愛おしくなった。
児童福祉施設で働いていた頃、子供達の引率で幾度も琵琶湖を訪れた。
琵琶湖の遊覧船に乗船したこともあった。
湖西線の列車に乗って湖の雪景色に胸を打たれたこともあった。
これから先何年ここで暮らしても景色を目にすることはない。
見たことのない場所で生きていくのだ。
そして最後まで見ることはないのだ。
だからしっかりと感じて暮らしていこう。
音を聞いて匂いをかいで、そして手で触れて生きていこう。
たくさんの思い出が生まれるように。
(2022年5月8日)