「あなたの願いが叶いますように。
気をつけて過ごしてくださいね。
神の御加護を。」
誕生日に届いたジョンディーコンからのメッセージだ。
ジョンディーコンはフィリピンのセブで暮らしている小学生だ。
日本の制度では中学生ということになるのだろう。
便利な時代で関係者がビデオメッセージを届けてくださる。
十数年前、海外赴任でセブで生活していた日本人の人達がセブの子供達と出会った。
子供達は貧困で学校にも行けないという環境の中にいた。
教育の機会をプレゼントするというささやかな活動がスタートしたのだ。
活動はたくさんの人達の共感につながっていった。
現在では数十人の子供達が学校に通っている。
大学生もいる。
視覚障害の僕は日常たくさんの人に支えられて生きている。
僕にできる社会への恩返しを探していた頃、この団体の存在を知った。
この活動がフィリピンの国や社会状況を劇的に変化させるということはできない。
でも、教育が人生を豊かにしてくれるのは間違いないことだ。
そういう人が一人でも増えればそれでいいと思っている。
この団体が10年目を迎えた時に一度だけセブに出かけたことがある。
ジョンディーコンの家を訪問して彼と直接話をした。
山道をよじ登った場所に家らしきものが並んでいた。
6畳もないくらいの部屋に家族6人が暮らしていた。
台所もトイレもなかった。
僕はその環境に愕然とした。
ただ、家族や近所の人たちが笑顔だったのがとても印象的だった。
不思議だった。
僕達の国は幸せの本当の意味を少し間違えてしまったのかもしれないとさえ感じた。
「将来、何になりたいの?」
僕はジョンディーコンに尋ねた。
「ドクター。」
優秀な成績の彼ははっきりと答えた。
笑顔だった。
明日の食事さえ不安定なはずなのに笑顔だった。
僕にできるささやかな活動、しっかりと続けたいと思った瞬間だった。
ジョンディーコンが大学を卒業するまでは支援を続けたいと思った。
最近のセブはコロナに加えて大きな台風にも見舞われたらしい。
飲料水の確保にも困難とのことだ。
ジョンディーコンのメッセージにはいつも恨みつらみの言葉はない。
そして、神様への感謝の言葉がある。
特別な信仰のない僕にはそれがとても輝いている。
支援しているようで支援されているのかもしれない。
この星で出会った人間同士、感謝して生きていきたい。
☆この活動に興味のある方は、このホームページ内のリンクをご利用ください。
04 NPO法人 イロイ・メモリアル・スカラーシップ(EMS)
(2022年1月9日)