講演の後、ガイドヘルプの体験ということで高校生達と学校の周囲を歩いた。
去年講演を聞いてくれた生徒達だった。
同行援護の資格を取得している彼女達の基本姿勢はプロのレベルだった。
脇はしっかりと締まっていて手はまっすぐに伸びていた。
背筋も伸びたそのサポートの姿は美しいとさえ感じた。
そして、僕の目の代わりになろうというやさしさも伝わってきていた。
僕は気持ちよく歩いた。
一歩一歩を大切に歩いた。
一人一人を信じて身を任せた。
頑張っている彼女達に僕ができるたったひとつのプレゼントのような気がした。
最寄り駅まで送ってくれた彼女達と別れて東京駅に向かった。
新幹線の中では充実感と快い疲労感を感じながら少し眠った。
京都駅からは地下鉄と阪急電車を乗り継いで帰った。
桂川駅からタクシーという選択枝もあったがなんとなく電車で帰りたい気分だった。
桂駅の改札口を出たところで声がした。
「お手伝いしましょうか?」
僕はバス停までのサポートを依頼した。
高校3年生の彼は中学1年生の時に僕の講演を聞いたと話してくれた。
6年ぶりの再会だった。
勿論、6年前の少年を僕は憶えてはいない。
でももうすぐ受験だと笑った彼は確かに少し大人になっていた。
同じ日に東京の女子高校生と京都の男子高校生にサポートしてもらったことになった
のは偶然とは思えなかった。
少し早いクリスマスプレゼントを未来から受け取ったような気分だった。
幸せだと感じた。
一晩寝て、また明日は午前が大学、午後が中学校での講演だ。
僕も未来に向かって頑張ろうと強く思った。
(2021年12月2日)