集合場所までシンキもリジャルも自転車できた。
二人とも別々の場所で暮らしているのだが、とても遠いというのは共通点だ。
電車を利用しないということは何の矛盾もない日常的な選択らしい。
少しでもコストダウンというのがこの国で生きていく方法なのだろう。
彼らとは福祉の専門学校で出会った。
それぞれ高齢者施設で働きながら学んでいる留学生だ。
シンキは台湾、リジャルはインドネシア出身で僕との会話は日本語だ。
僕達はいろんな話をしながら宇治川沿いを散歩した。
シンキは台湾にも一応四季があることを教えてくれた。
ニイタカヤマは台湾にあることも初めて知った。
雪が積もるということにも驚いた。
戦時中の日本の占領の結果、親日も半日もあるらしい。
異国の話題に僕はどんどん魅かれながら話は盛り上がっていった。
リジャルはインドネシアの季節を夏夏夏雨と教えてくれた。
ひょうきん者のリジャルらしい表現だ。
リジャルの家の庭にはマンゴウの木があるらしい。
果物だけはいっぱいあると笑った。
島国だが領土は日本より広くて人口も日本の3倍くらいらしい。
言語の数は途方もない数字だった。
僕は地球を感じながら歩き続けた。
二人は交互に僕のサポートをした。
凹凸のある地道も会談も揺れる吊り橋も何の問題もなかった。
トイレの案内も困ることはなかった。
風景を感じながら水音を聞きながら、おいしい空気を吸いながら僕たちは歩いた。
気づいたら歩数計は1万4千歩を超えていた。
いたるところで彼らのやさしさが伝わってきた。
人間同士のつながり、素敵だと思った。
そしていつか僕が高齢者施設に入所するような日がきたら、
彼らに介護してもらえたらいいなと本気で思った。
とりあえずはこうして元気なうちに、次は温泉でも連れていってもらおうかな。
(2021年11月11日)