お琴、三弦、十七弦、尺八、
それぞれの音色が響き合った。
左から右から、強く弱く、浅く深く、
音が生きていることを主張しているようだった。
呼吸さえ感じられた。
まるでオーケストラだなと思った。
演奏者の一人が僕の友人だった。
見える人達の中で一人だけ見えない人だった。
彼女が部隊を動く時には仲間がそっとサポートしていた。
彼女の前には譜面台はなかった。
それでも舞台には何の違和感もなかった。
見えても見えなくても変わらないプロの演奏者の姿がそこにあった。
堂々と演奏する姿は美しいとさえ思った。
目が見えないと無理だろうと思われることは多くある。
そしてそれはほとんどイメージの世界であって現実と離れていることが多い。
勿論、いろいろなことを誰でもができるわけではない。
才能も努力も要求されるのかもしれない。
だからこそ、安易にできないと決めてしまう雰囲気には恐怖を感じる。
満ち足りた気持ちで会場を後にした。
彼女の友人ということをどこか誇りに感じた。
(2021年10月26日)