草むらから聞こえてくる虫の声に足が止る。
コオロギ、マツムシ、クツワムシ、カネタタキ、スズムシ・・・。
名前だけは知っているけれど、判別はできない。
どの虫がどんな姿をしていてどんな声で鳴いているのか、
見える頃にもっと学んでおけばよかったと後悔がある。
それは虫の声だけではない。
草花の名前、空に浮かぶ雲の種類、いろいろな魚の特徴、鳥の声、すべてそうだ。
もっとちゃんと見ておけばよかった。
ちゃんと知っておけばよかった。
きっと、どうでもいいことに視線は向かっていたのだろう。
知らなくていいことを知ろうと頑張っていたのかもしれない。
それはそのまま人生の反省につながっていく。
でももう戻れない。
否定してもやり直すこともできない。
それも含めて僕の人生なのだろう。
人生の秋にさしかかって思う。
見えなくなって見えてきたことも確かにある。
それを大切にしながら生きていきたい。
今年の秋が始まった。
(2021年9月8日)