故郷の風景がニュースで流れたらしい。
海辺の風景だ。
幼馴染からのメールにはそれが描写されていた。
僕はワクワクしながら記憶のアルバムのページをめくった。
しばらく時間をかけて頑張ってみた。
でもそこにはたどり着けなかった。
半世紀という時の流れはもうセピア色を越えてしまったのだろう。
それは仕方のないことなのだと自分に言い聞かせながら目を閉じた。
グレー一色に塗られたいつもの風景が立ちすくんだ。
何も変化のない無表情の風景だ。
僕は静かに呼吸をした。
ふとアルバムの別のページがめくられた。
そこには幼馴染の笑顔があった。
キラキラした目で笑っていた。
声までが聞こえてきた。
その新鮮さに驚きながらうれしくなった。
つい昨日見たような映像だった。
宝物は大切にしまわれていたのだ。
僕はありがとうってつぶやきながらそっとアルバムを閉じた。
(2021年7月1日)