「どうしてそんなに前向きになれたのですか?」
大学生からの質問を僕は自分自身に問いかける。
実は僕自身は前向きなんて思っていない。
前向きになりたくてもどっちが前かさえわからない。
時が解決してくれるという言葉があるけれど、
見えなくなってもう25年にもなるのに解決なんてできていない。
悔しかったり悲しかったりの思いは日々僕の魂を襲う。
まるでからかうように僕の心を嘲笑う。
煩悩の塊だ。
あきらめの気持ちとあきらめられない気持ちがもつれる。
生きていくということはきっと幸せを求めるということなのだろう。
それはどんな空間でもどんな時でもどんな条件でも同じなのだと思う。
ただそうやってもがきながら呼吸をする。
笑いながら鳴きながら呼吸を続ける。
そんな日常の繰り返しの中で幸せはそっとかくれんぼする。
気づいたら、それはささいなこと。
とってもとってもささいなこと。
そして確かに生きていると想えること。
ふと気づいた。
歩けば足は前に出る。
後ろに歩くなんてできない。
歩くということは勝手に前に向かうということなのだ。
生きるということは勝手に前を向くということなのかもしれない。
(2021年6月1日)