後輩達はしっかりと僕の話を聞いてくれたようだった。
鹿児島県立川内高等学校、僕の母校だ。
創立記念日の講演にお招き頂いた。
同窓会の関係者の皆様が僕を推薦してくださったのだ。
光栄なことだと感謝した。
僕は後輩達の前で正直に話をした。
僕は決して成功した人達の代表にはなれない。
ひょっとしたら、挫折を味わった人の代表なのかもしれない。
僕は偉くもなれなかったしお金持ちにもなれなかった。
失明というとんでもないことも起こってしまった。
それでも頑張って生きてきた。
振り返ってみれば、ささやかな幸福感はある。
そして、それはたくさんの人達との交わりの中で感じてきたものだ。
どんな人生にも悲しみや苦しみはある。
そして、その向こう側にはそれぞれの幸せもきっとある。
僕は僕自身に伝えるかのように話をした。
帰りの新幹線の中で卒業式の日の光景が蘇った。
47年前の光景だ。
ラブビー部の部室の前から眺めたグラウンドが輝いていた。
真っ青な空の下で過ごした時間が微笑んでいた。
確かにそれは豊かな時間だったと思う。
その豊かな時間がその後の僕の人生を応援してくれたのだ。
後輩達の人生がそれぞれに未来につながっていくようにと心から願った。
(2021年4月19日)