大学での僕の授業は必須科目ではない。
興味を持った学生だけが選択してくれる。
しかも4講目だから終わるのが17時くらいになってしまう。
遠方から通学している学生やアルバイトが忙しい学生には受講しにくいと思う。
昨年度は4月にコロナによる緊急事態宣言ですべての授業がオンラインになった。
突然の変化だった。
見えない僕はその変化についていくことができなかった。
僕は渋々1年間の休講を決めた。
残念だった。
1年の歳月が流れた。
また新しい年度がスタートし、僕の授業も始まった。
初日、僕は授業の前にキャンパスにあるスターバックスでコーヒーを飲んだ。
いつもは雑音に聞こえる学生達の話し声をとても懐かしく感じた。
それから教室に向かった。
教室のドアを開けると学生達がいた。
受講してくれる学生達がいてくれたことをうれしく感じた。
僕はマイクを握ると、まず、素直にその気持ちを伝えた。
「僕の授業を選択してくれてありがとう。」
それから講義に入っていった。
1年間に90分の授業を30回実施する。
1年後、学生達は成長し、視野を広げ、新しい価値観を身に着けたりする。
そしてキラキラと輝く。
その姿はまさに未来を感じさせる。
ほんの少しだけれども、そこに関われることを幸せだと思う。
僕にできるささやかな活動のひとつだ。
授業が終わってパソコンなどを片付けていたら、女子学生が教壇の前にきた。
「ありがとうございました。」
彼女は小さな声でそうささやきながら教室を出ていった。
「こちらこそ。」
僕も笑顔で返した。
1年間頑張ろうと思った。
(2021年4月10日)