教え子の学生と久しぶりに会った。
彼女は別れ際に瓶をくれた。
手のひらにすっぽり入るくらいの小さな瓶だった。
「少しだけですが、私の手作りです。」
瓶の中身はフキ味噌だった。
帰宅した僕は早速夕食に頂いた。
瓶の中から小さな小さな塊をお箸で掴んでそっと口に入れた。
何とも言えない苦みがゆっくりと口の中に広がった。
苦みはやがて僕の脳まで届いた。
幸せのお薬のような気がした。
年齢を重ねながら味覚も成熟していくのだろう。
いつの頃からか苦みと言う味をうれしく感じるようになった。
人生の苦さを知ってきたからだろうか。
この春卒業する彼女は福祉の現場に就職する。
おじいちゃんやおばあちゃんの介護の仕事だ。
大変な仕事だ。
頑張って欲しいと心から思う。
出会った学生達の春が輝いてくれますようにと心から願う。
(2021年3月4日)