僕が彼女と始めて出会ったのは見えなくなってからだった。
たまたま視覚障害者関係のイベントで出会った。
僕の講演を聞きにお母さんと一緒に参加してくれていたのだ。
口数の少ない彼女の笑顔が印象的だった。
あれから、もう10年以上の付き合いとなった。
昨夜の夢に彼女が登場した。
数日前に電話で話をしたせいかもしれない。
夢の中では何の違和感もなく僕達は話をしていた。
目が覚めて気づいた。
僕は彼女の顔を見たことはないのだ。
それでも夢の中では彼女の笑顔があった。
どういうことなのだろう。
不思議な感じがした。
彼女の雰囲気、やさしい語り口、控え目な笑い声、
それが朧げな顔の映像につながっているのかもしれない。
朧げだから思い出せるような記憶には残っていない。
でも確かに普通に笑顔があったのだ。
そして納得した。
うれしいから思い出せるのだ。
思い出すということが幸せなことなのかもしれない。
それはきっと見えるか見えないかなんて関係はないことなのだろう。
(2021年2月24日)