カサカサ、
シャカシャカ、
クシュクシュ、
シャッシャッ。
白杖の先で秋が歌う。
足の裏で秋が遊ぶ。
僕は立ち止って周囲を見渡す。
黄色、こげ茶色、赤色、緑色、黄土色、茶色、橙色、
記憶から飛び出したクレパスが秋を彩る。
絵になる風景が静かに佇んでいる。
子供の頃から絵を描くのは苦手だった。
小学校2年生の時、一度だけ絵が入選したことがあった。
絵で褒められたのは最初で最後だった。
「元気がある」という評価を憶えている。
中学の時、夏休みの宿題を後ろの席の女の子に頼んで、
それが先生にばれてしまってこっぴどく怒られた思い出もある。
元々のセンスの無さを痛感していた。
でも鑑賞するのは好きだった。
京都で暮らすようになって美術館がとても身近になった。
秋には特に美術館に足を運んだ。
いろいろな絵画を眺めながら過ぎていく時間が好きだった。
飽きることなく眺めていた。
見えなくなってから美術館に行くことはなくなった。
いくつかの絵画が記憶の底に残っている。
人間は美しいものが好きなのだろう。
記憶の中の数枚の絵画を鑑賞して、
それからまた周囲を見渡す。
風景画もいいなとなんとなく思った。
秋が笑った。
(2020年11月16日)