ボランティアさんは校庭に入ると真っ先に教えてくださった。
オレンジ色のマリーゴールド。
僕はすぐにお願いした。
「触らせてください。」
ボランティアさんは校庭の横の花壇まで誘導してくださった。
僕は花壇に近寄って腰をかがめた。
人差し指で花を触った。
いくつかの花を触った。
それから、親指と人差し指で茎を触りながらたくさんの蕾を確認した。
手のひらで全体をそっと触った。
葉っぱの先を少しちぎって香りを嗅いだ。
無意識で閉じてしまっている目を更に意識的に閉じた。
緑の香りをそっと吸い込んだ。
緑の香りと鮮やかなオレンジ色が僕を包んだ。
柔らかな気持ちになっていった。
緑とオレンジと白い杖、なんとなく絵になるなと微笑んだ。
いつもの秋がそこにあることをうれしいと思った。
花の命も自分の命も愛おしく感じた。
(2020年11月1日)