見えなくなった時、もう何もできなくなると思ってしまった。
なんとなくそう思ってしまった。
それと同時にそれは嫌だと強く思った。
失うことが嫌だった。
失いたくなかったから工夫を始めた。
普通に起きて、普通に顔を洗って、普通に食事して、普通に出かけて・・・。
普通に生きていきたいと願った。
そのために点字や白杖歩行の専門的な訓練も受けた。
いろいろな努力もしたし練習もした。
そして途中で気づいた。
僕達だけが頑張ってもうまくいかない。
僕達を受け入れる社会の理解も不可欠だ。
どうやって知ってもらえばいいのだろう。
ボランティアさんのアドバイスもあって書くことを始めた。
無我夢中で書き続けた。
未来を夢見ながら書き続けた。
稚拙な文章だし、文学とは程遠いのも自覚していた。
それでも書き続けた。
恥ずかしさを越えて書き続けた。
普通に生きていける未来のために書き続けた。
月末の講演の予定が昨日の京都新聞の記事になっていた。
エッセイストと紹介されていた。
気恥ずかしいけどうれしかった。
ほんの少し、未来に近づけたような気がした。
(2020年10月14日)